タナゴ竿制作・振出し竿






















                        
 制 作 過 程 4

風景画像は市川英之氏による

 



 〜初めに〜


タナゴ竿の振出し式、つまり元竿に残りの竿が仕舞われるのものは恐らくないでしょう。他にも定法とは違ったやり方がいくつかあります。定法では元竿には、淡竹、矢竹が用いられますが、ここでは布袋竹を使っています。また穂先は、一般的には矢竹か矢竹とクジラひげの組み合わせが多い。ここでは真竹の四枚合わせにしています。また穂持には高野竹を使っている所も定法にはない事でです。                                                  

材料のことはともかく、この項の主眼は振出し式竿の制作過程にあります。並継ぎや印籠継ぎの解説書はあっても、管見(かんけん)よれば振出し式の和竿の解説書はないと見受けられる。和竿作りを趣味としている方に、何かの参考になればと思いこの項を起こしました。またタナゴ竿は、江戸時代の”遊び心”の気風を宿した竿です。この制作過程において、どれだけ表現できるかも自分の課題と思っています。


1切り組み



      


 
@[穂先ー分かり易く1番と呼ぶ}ー下矯め済真竹四枚合わせの穂先を使っている。穂持に高野竹を使っているので、この強度に負けない硬さがある真竹を使った。

A{穂持2番と呼ぶ}ー下矯め済。普通は矢竹を使う所であるが、元竿に布袋竹を使っているので、上と同じく強度の相性を考えて高野竹を当てた。この竹は、矢竹よりも節が低く、ほぼ正円に近いのので元竿に仕舞うのに向いている。ただ矢竹よりも内径に節も肉質も分厚で硬さもあるので、節も肉も削るのに相当苦労しそうである。

B{元竿3番と呼ぶ}ー下矯め済。節間が均等に配置され、テーパー(勾配)がほとんどないので元竿としておもしろさを感じた。写真では分からないが、残念ながら正円には程遠く楕円形である。そのために2番の正円に近い竹を中に仕舞うために、内径をこれに合わせる削りをするので慎重を期さなければならない。

C{飾り}今年の干支である巳年(みどし)にちなみ縁起物のヘビの彫り物を元竿に付ける。材料はヒノキで、杭として竹釘が二本付いている。

 
2道具を作るーヤスリ作り

              
     
 
(1)道具ー鉄床(かなとこ)、タガネ(金工用のノミ)、カナヅチ

(2)方法ー鉄床上にピアノ線を置き、タガネで叩く。右45度、左45度と方向を交互に変えながら、5cm程の長さの目を立てる。タガネ刃先が線に深く食い込むことによって、その左右が外径うえに盛り上がりヤスリとなる。(これを私は「目を立てる」と称しているが、誤りがあったら訂正する)

(3)種類ーピアノ線ー2mm、2.5mm、3mmの3種類。長さヤスリが手元にあるので、3.5mm以上が必要な場合はこれを使う。
 

3節抜きと肉質浚い(さらい)

            
      
中通しの節抜きとの違い】ー中通し竿は、内部の節の隔壁に道糸が通る程度の穴を開ければ良い。絶対肉質は削らない。振出し竿の場合、例えば1番の竿が2番の竿の中を通るように、1番の姿態に合わせた削りを行う。そのために節の隔壁はもちろんのこと、内径の肉質も浚っていく。写真のように竹全体を仮巻きして置き、ヤスリの動く衝撃をできるだけ緩和しておく必要がある。


{方法}ー@ヤスリの先端をもう一工夫して、錐(きり)の三つ目や四つ目のように、先端をとがらせる。固い節の隔壁にヤスリが突き当たった時に役立つ。

A
細いヤスリから作業を始めて、十分中の浚いができた所で次に一段太いヤスリへと移っていく

B
例えば2番の先端には、1番の込みが入ってくる。込み部は当然太いので、この分の太さを計算に入れて、先端はあまり肉質を浚わない方が良い。


4込みの寸法を決める

(1)1番の込み寸法を決める(1番と2番の竹)

         


(2) 2番の込み寸法を決める(2番と3番の竹)
 
   


         
 
{方法}ー(1)と(2)は竹は違うが同じ事をやっている。(1)で説明する。1番の細い先端部を、2番の細い先端部に挿入していく。1番の太い元部でそれ以上入らない所が出てくる。右手に持っている白いテープの個所である。ここが込み寸法になる。
 

(1)1番の込みが収まる

  
 
 
(2)2番の込みが収まる

  
 


5全体が出揃う
 



      




 
 

6漆塗りー漆塗りと研ぎについては、以下の項目で詳述したつもりなのでご覧ください。[制作過程1] ・[小わざ・小道具1] ・ [小わざ・小道具2](刷毛塗、拭き漆塗を詳述)


7完成


    


    
  

 
〜終わりに〜                                                  

振出し竿のむずかしさは、それぞれの竹が寸分の狂いもなくと言っていいほど真直ぐに伸びてなくてはならない事でしょう。火を入れて竹を矯める技が試されると言っていいかもしれない。そして竹の内径をほぼ正円に近い形状に仕上げることも難しい事柄に入ります。削りが弱いと次の竹は入らない。削りが強すぎると繊維質を痛めてしまう。慎重な手さばきが求められます。だからこそ作っていておもしろいと言えます。完成したときは、心から美酒を味わえる心境となります。                   

今年の干支のヘビを配しました。おヘビ様にお願いしてたくさんのタナゴが釣れるように。また竿尻には瓢箪(ひょうたん)を付けました。「瓢箪から駒」のたとえで、この短竿から意外に大きい幸せが訪れるようにとの勝手な願いです。タナゴ竿は江戸時代から、粋と遊び心が求められています。それが表現できたかはわからない。仕舞寸法 51cm、全長 128cm



  

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(定盤・内径削りなど)
 
小わざ・小道具2
(漆塗り)
 
小わざ・小道具3(紙筒の室・継ぎ順番など)

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(クジラ穂先の作り方・ガイドの配列など)

小わざ・小道具5
 
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