水雷竿ーハゼ竿制作(中通し竿の制作過程)
 

1 初めに


水雷竿とは三尺程度の中通し短竿を言います。船下に群れているハゼを集中的に狙うために作られる竿です。
名前の由来は松本栄一氏によると「水雷は 火薬を積み込み水中で敵機を破壊する兵器だが、これが
船底を狙うのと同様にこの竿もまた船底の魚を狙うところから名づけられたとのことです。明治以降の東京人がしゃれて付けた呼び名である」(意訳)【和竿辞典】(つり人出版社)


      


 *穂先、穂持ち、握りいずれも布袋竹

*糸巻き一対

*普段と逆に胴の拭き漆を初めに行った

 2切り組み

@テーマに即し、画像の見やすさを優先して先に胴の拭き漆を行った(上記)。


A今回の制作は、持ち運び易さを考えて3本継ぎにしてある。


B穂先は20年以上枯らした布袋竹。かなりの弾性があり、短い穂先ながら幅広いオモリ負荷が得られ
るものにした。                                                                     

C穂持ち竹選びの件だが、何年竿作りをやってもこれには苦労させられる。特に今回はオモリ負荷の幅
が大きいので軽いオモリを負荷した時の穂持ち竹への力の伝わり方、重いオモリの負荷を加えた時の力
の伝わり方。あれやこれや候補となる穂持ち竹を眼前にいつもの通り呻吟(しんぎん)が始まる。結局は
中間のオモリを負荷した時に適合する竹を選ぶ。最初からそのように考えて選べばいいのだが、納得が
いったりいかなかったり苦しい作業である。

D穂先と穂持ちの両端は節を残して裁断する。

E握りは、一対の糸巻きの杭が入りやすくかつ糸巻きの台座が起きやすい竹を選ぶ。
 

3中通しの節抜き


       



       
                          
[右の写真]
ワイヤーロープ                                                   
0.4mm
0.5mm
1.0mm
(釣具店で購入)                                                    

 1両刃作りの道具とやり方

@道具;各種直径のピアノ線、両口カナヅチ、鉄床(かなとこ)、人工ダイヤモンド粉のヤスリ、ワイヤーロープ。

A強火のガス火にピアノ線を入れる。瞬時に真っ赤になる。

Bピアノ線が柔らかくなったところで素早く鉄床に置き、カナヅチの凸面で強めに2回叩く。それ以上叩く
と、刃が広がり過ぎて次の工程に障りがある。ここは両刃の外形作りが出来れば良い。


2両刃の研磨する


@両刃を平板な板にのせ、人工ダイヤモンド粉ヤスリで刃を付けていく。

A両刃の幅は、ピアノ線本体の直径よりも少だけ幅広のものである。本体よりも大きく超えた両刃は身外
側にはみ出して決定的なダメージを与える。

B心がけることは、節を抜くことであり、節間の身内部の肉を削ることではない。


3 節を抜く

@節を中心に仮巻きをしておく。

A最初に細い方の2節抜く(手動)。ゆっくり両刃を回転させながら前に進ませていく。ここで貫通の手ご
たえを感じないならば、一旦作業を止めて、両刃をヤスリで更に鋭角にする

B細い方の2節が無事抜けたら、太い方の節抜きを行う。細い節が抜けたことは両刃作りは成功してい
る証左であり太い方の節は安心して抜けるということになる。つまり身外側に刃が出ないということになる

C全部の節に穴が開いた所で、ワイヤーロープを取り出す。

Dワイヤーロープの片方を釘で固定して、竹全体にロープを通したらもう片方の端を手にもって竹を彎曲
させながら研磨していく。ワイヤは2本のピアノ線をねじって1本にしてある。このことで節の穴は広がり、
かつ竹の内径の掃除ともなる。


★通常節抜きは火入れの前段に行われる。まだ身も節も柔らかい。従って節穴は抜きやすく、身も曲げ
られるのでピアノ線の案内が容易である。今回は火入れ矯め済みのあとで行った。節は水分が抜けて硬
い。しかし全長が一直線なのでピアノ線の案内はあまり苦労せずに済んだ。



 4 穂先と込みの補強(1)
          

 パイプ(内径) 
1穂先(銅製)1.5mm        
2 穂先込み(ステンレス)2.0mm
3 穂持ち込み(高野竹)4.0mm 
 
※節抜き作業によって竹の先端は相当なダメージを受けている。一連の作業が終了後、穂先先端、穂先
込み、穂持ち込みの中にパイプを入れて補強する。これは同時にヤスリの込み作りの時も補強として役
立つ。   
 

5 穂先と込みの補強(2)


       
 

※二か所の込みを更に補強するために糊漆を塗る。糊漆(姫糊0.5−ご飯粒の糊、砥の粉1、生漆0.
5、水0.5−目安として見てください)の塗布が目止めとなり、込みの強度を高めてくれる。乾いたら生漆
を塗る(込みが黒ずんだ所)。


6 糸巻と糸の種類について

当項目は竿作りの中では、重要視されないのであまり解説として触れられない。しかし重要度はあると思
うので今回日思っていることを記したい。

      



@糸を巻く(下地が正円近くの形ができているとして)

*(右利きとして)左手に竿を持ち、右手に糸を持つ。これで2点が固定。もう1点は竿の端をどこか固定で
きる所に置き、3点で巻いていく。「制作過程1」で記したように、右手と左手は腹の幅で姿勢を崩さないよ
うにする。

*下地に勾配がある時は、その坂下から坂上に登るように巻いていく。逆に巻くと、一件きれいに見えても
だいたいが後日ゆるんでくる。

*最初と最後は丁寧に巻き上げる。最終部では止めが終わった余り糸を、カッターナイフを寝かせてやや上向きにして切る。余り糸はきれいにカットできる。

Aナイロン糸について。
ナイロン糸は安価な上に丈夫である。これを使う人も多いだろう。実験的に使ってみた。漆を塗ると、漆がはじかれ糸下の竹肌まで漆が届いていないことが分かった。つまり一回塗っただけでは「糸極め」が出
来ないのである。ナイロンは吸水性があると聞いていたが、漆との親和性に欠ける。また熱にも弱い。

B 絹糸について
絹糸は弱いというイメージがあり、しかも一巻き1000円を超える(50番手の例)。高いだけの価値はあ
り、熱に強く、実は丈夫さはかなりのものである。女性の絹製ストッキングはつま先絹糸を覆っているがな
かなか破れない。漆との親和性は極めて高く、漆の浸透性は抜群である。竿師が「糸極め」に絹糸を使う
のは十分理由がある。
 
 

3 水雷竿の完成

    
 梨子地銀粉蒔絵の加飾


   
 長さ(95cm)  仕舞寸法(41cm)  重さ(30g)


*和竿作りに役立つ本

松本栄一著 「和竿辞典」 つり人出版社
 
 






 サ メ 皮 を 張 る
 

初めに



サメ皮を化粧巻として張るのはほぼヘラブナ竿です。解説本やwebページを色々調べたが、張り方の解
説をしているのは管見によればありませんでした。先輩たちが築き上げてきた技法が風前の灯です。記
録として残していきたいと思います。サメ皮の名の付く品物の多くは、エイ皮と思われる。サメ皮を仕入れ
た業者は、昔のような需要がないのでこの品物は扱わないとため息交じりに言ってました。
 
          
 サメ皮を張ったフライ竿
 

 
       
(1)

縦24cm、横34cm。水に半日漬けて皮を広げる
乾いている時は丸まっており、どんな強力(ごうり
き)の人でも広げるのは無理である。極小の三角
形の突起物が全面を覆っている。
 (1)                                 
裏は膠繊維(にかわせんい)ー膠原繊維、コラーゲン
繊維とも呼ばれているーに覆われている。後述する
が、この繊維質を除去するのに多くの時間が費やさ
れる。外縁にも広がる膠繊維。

    
    
(2)

厚さ4mm。
突起物に大小有る。大きい山の密集した所を選
ぶ。水につけ柔らかくなったといえ、小刀や普通の
ハサミでは裁断出来ない。剪定(せんてい)バサミ
を使う。

(2)                                  


皮から取り出した厚さ4mmのものを竿に巻くと、不
恰好になる。出来るだけ薄くするために、膠繊維を取
り除く。
 
   
      
水 に浸して作業
事前に黒漆を塗り、すぐ拭き取ってしまう。山と山
の隙間に漆が残る。黒色なら塗料は自由。(溶剤
を多めに入れ、薄墨色で塗る)裏側の繊維質を除去する以前の固い段階で、木槌やカナヅチを使っ
て叩く。黒色を塗るのは、白を黒のコントラストを
楽しむため。
 
水に浸して作業

(ぬるま湯に浸して作業する手段もあるが、温度管理に失敗すると表も裏も身が崩れてしまうので推奨でき
ない)刃の丸くなった小刀と目立ての効いたヤスリを
使う。刃の鋭い小刀は、表側まで切ってしまうので丸
くなった刃が良い。繊維がまつわり付いてくるが、小
刀、ヤスリを交互に使い切り取っていく。

      
  完成・表面  完成・裏面
  


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ハゼ中通し竿・サメ皮を張る

 
 
 









制 作 過 程 2
 
           丹沢湖

    ( 風景写真は市川 英之氏による)