小 わ ざ ・ 小  道 具 1


       旧高橋是清邸
 (風景写真は市川 英之氏による)
 
簡易定盤(漆塗り台)
 
説明
 。  
簡易な定盤(じょうばん)でもこれがあると、漆塗りの上達度は違ってくる。面を朱色にしてあるのは、使う漆のほとんどが黒系統か茶色系統のためである。
【作り方】

(1) 小机を作る。
幅(45cm) 奥行(30cm) 高さ(23cm)

(2) 下地作り

@ 布着せをする
* 糊漆を作る姫糊(ご飯粒の糊)0.5 砥の粉1、生漆(瀬〆で可)0.5、水0.5
* 寒冷紗(かんれいしゃー蚊帳等に使われる)または麻布を用意しこの全面に糊漆をヘラで塗り付け、また木地にも糊漆をヘラで塗りつける.
* 寒冷紗をバイヤス(斜め布)にしてヘラで木地に張り付ける。木地から寒冷紗がはみ出ても、乾いた段階で切り取るのでそのままにして漆室に入れる。バイヤスに張るのは、建物の筋交いと同じで木地の強度が増すため。 
* 一日を経て室から出して、はみ出した余分な寒冷紗を小刀で切り取る

A 切り粉を用意して置き、バイヤスの網目にヘラでしごき入れる。室に入れる。
* 切り粉〜姫糊0.5、地の粉(能登の土)1、砥の粉1、生漆0.5、水0.5

B 乾いたところで、砥石を使ってから空研をする

C そのまま1,2か月放置しておく。
* 全面平坦なったはずが、水分が完全に抜けて部分的に「痩(や)せ」というかすかな窪みが出てくる。その窪みは、また切り粉で埋めればいい。

D 平らになった表面に今度は錆漆(さびうるし)をヘラで2回塗り付ける。
* 錆漆〜砥の粉1、生漆0.5、水0.5
* 錆漆が乾いたら、三和(するが)砥石で水研をして、終わったところで生漆を塗って室に入れる。これをもう1回行う。

(3) 表面に下塗、中塗、上塗をする。
* 下塗ー生漆、中塗ー透中漆 上塗ー朱漆

★ 中塗りは厚めに塗ってもいいが、湿度90%以上、温度30℃以上の室に入れると「「漆焼け(黒漆を塗ると茶色になる)」や「縮み(漆が激しく収縮して山のようにせり上がる)」を起こす。

★ なぜここまで複雑な工程を経て作るのか質問を受けたことがある。木地に寒冷紗を張らずにすぐ下塗りを始めてはいけないのか。もしこのような寒冷紗無しで漆塗りをしていくと、必ず「痩せ」という窪みが生じる。これは漆が強い収縮率を持つため、木目を収縮させ「痩せ」を生じさせる。定盤として使い物にならない


 
漆 室
 

説明
   
大工に寸法と材質を指定し作ってもらった室である。外側はベニヤ材、内側は保湿性に優れた杉材を使っている。
* 形状ー長持ち型
 * 幅ー180cm  奥行ー60cm  深さー50cm

【漆室の管理】

(1) 温度28℃、湿度85%が漆が乾く条件とされている                  
一日一回は室の蓋を開けて中の様子を点検している。温度計等を見て納得して終わることが多いが、冬季には二回は点検をしている。

@ 冬季は温度は低く、空気も乾燥している。最も漆が乾きにくい時期である
そのために湯たんぽを入れたり、電熱器で熱を加えたりして温度管理をしている。。また湿度を保つために内側の杉材に霧吹きはもちろんするが、乾燥中の竿が入っていてそれができない時がある。その時は事前に水の中に浸しておいた杉の垂木を数本室に入れて保湿に努める。

A 夏期の頃
漆室が置いてある部屋に冷房機が備えられている。これを作動させると室が冷えてしまうので、クーラーは来客があった時だけ付ける

(2) 本で学んだこと

* 美術出版社 沢口吾一著「日本漆工の研究」、  理工学社 佐々木英著「漆芸の伝統技法」

@ 漆が乾く過程とは、漆成分のラッカーゼが酵素(こうそ)の触媒を得て、空気中の酸素と結合して酸化するためである。

A 触媒の酵素の分子は低温では活発に運動できないために乾きは遅くなる。
 

ヘラ竿穂先作り
  

更に詳しい制作過程は「制作過程V・ヘラブナ竿」にあります
   
ヘラブナ竿の穂先はどのように作られているのか質問を受けたことがある。複雑なので垂木で作った見本を見てもらいながら説明している。

(1) 3,4年以上ものの真竹を用意する

矢引き(約100cm)の長さに7,8節入っているものを選ぶ。節が多ければ多いほどよい。

(2) 真竹を分割する

竹を八分割できる道具を使い分割したあと、ほぼ真直ぐになっているひごを4本選ぶ。

(3) ひごの調整

@ ひごの甘皮を落とし、小刀とヤスリで表面を平らにしていく。途中にある節を平らにするには何回もヤスリ掛けをしなくてはならない。

A 甘皮を上に見て、二本の横側もきれいに平らにする。

B 長さ100cm程、厚さ6,7mm程のひごが4本出来揃う。

(4) ひご同士の貼り付け(赤線が元の甘皮のあった固い面)

@ まず二本を選び。ひごの上下を間違えないようにして、元の甘皮のあった固い面が上と下で接するように張り合わせる(木工ボンド使用)。垂木見本では十文字を縦に割った右側。

A ひご2本でもうワンセット作る。垂木見本では十文字を縦に割った左側。

B 2セットをまた元の甘皮のあった固い面が対面するように張り合わせる。

C 張り合わせるときクリップを右、左と交互にして止めて行けば4本のずれはない。

(5) 調子を作っていく

@ 十文字ができたところで、長めに作ってあるのでどこかで裁断する必要がある。その時、節の近くにノコギリを当てって節を残して裁断する。

A 小刀とヤスリで穂先の調子を作っていく。
十文字→四角形→円形→テーパー付け

B 時々火を入れて矯めをしていくが、このままでは熱で木工ボンドが溶けてしまう。熱に強い生漆を塗ってから火入れをする必要がある。
                        
★ ヘラ竿の穂先はクジラ穂先と並んで優れものである。調子の出し方で、キス竿、ハゼ竿、フライ竿の穂先ともなり得る。
  

すげ口内径削り


説明
   
普段柳葉刃物を愛用しているが、すげ口内の削りには自作の刃物を使っている。

@ 剣先刃物(上下に刃)5本を真ん中で切断して10本の刃を用意する。

A 電動ヤスリで剣先の鋭角状を桜の葉状にする。この時に剣先の刃はなくなっている。

B 桜の葉状にダイヤモンド粉の付いたヤスリを使って大方の刃を作る。

C 大方の刃状ができたら、砥石の荒目、中研ぎ、仕上げ研ぎと変えていき刃を付けていく。

D 仕上げ研ぎの段階で、竹の口を削り刃の切れ具合を見る。出てくる竹の屑が大きい時はまだ刃ができていない。屑が細かくなって初めて使い物になる。

E 長さー約17cm 刃の幅ー1.5mm〜11.5mm
 

込みを太くする
 

説明
   
ヘチ竿は細い竹を胴として使い、握り部は握りやすいように太い竹を選ぶ。当然込みの外径と握り口の内径に大きな差ができて、込みを太くする必要がある。

@ 寒冷紗(かんれいしゃー蚊帳等に使われる)に糊漆をヘラで塗り付けた上で、込みにバイヤス(斜め布)で張り付ける。(写真の白い所が寒冷紗)。

A 室に入れ、乾いたら余分な部分を小刀で切り落とし、切り粉を寒冷紗の網目の中にヘラでしごき入れる。
* 切り粉ー姫糊(ご飯粒の糊)0.5、地の粉(能登の土)1、砥の粉1、生漆0.5、水0.5。

B 室に入れ乾いたら、砥石か荒目の紙ヤスリで空研する。

C 円周が丸くなったら、次は込みを先径を細くして楔(くさび)型してから生漆を塗って固める。

D 室で乾かし、込みがすげ口の内径に合うように調整する。砥石か耐水ペーパー#800以上で水研ぎをしながら調整する。

E 込みが完成したらボンドを付けてすげ口に固定する。
 

竹の曲尺
 

説明
 
竿作りは、尺、寸の尺貫法で寸法を取っている。
* 竹製の尺貫法のものさしはこの世から消えたのと同然で、いまは金属の曲尺が主流である。私の家には竹製のものさしが代々あるが、宝の物として大切にしている。

* 竿を作っているとき、長いものさしだけでなく短く手のひらにはいるぐらの物があると便利なので自作した。材料は収縮の少ない孟宗竹である。四寸用と六寸用の二種類ある。
 

段差の糸巻き
 

説明
 
* 段差の大きい個所に糸を巻くと、写真左のようにガイドの金属の部分が巻ききれないで残ってしまうことがある。

* きれいに糸を巻くために、巻き始めの糸を長めにして置き、段差のあるところに来たらその糸を段差の中央部に置く(写真右)。続いて糸を先に置いた糸の上を登らせるようにしていくときれいに巻ける。
 

竿尻リング
 


説明
                    
このリングは尻手ロープと繋がるので相当頑丈にしておかなければならない

@ 約12cmの組紐中ほどで二つ折りにして、リングの真下に違う色の糸を何重にも巻き付ける。

A 二本に分かれた組紐の中に千枚通しを差し込んで、紐をしごきながら糸状にする。

B 糸状になったものを竿に末広がり(八の字)に置き、ボンドで固定する。

C 末広がりのある所の円周全体に糊漆を付けて、室に入れる。      * 糊漆ー姫糊0.5 砥の粉1、生漆0.5、水0.5

D 乾いたら、砥石または使い古しの目の丸くなったヤスリで空研して、円周全体が平坦になるようにする。

E 強固にするために生漆を塗り室に入れて乾かす。

F 乾いたら、砥石か耐水ペーパー#800以上で水研をして平らにする。

G 最後に太い絹糸の30番を巻く。

※当ページには多くの数値が出てきます。例えば「錆漆(砥の粉1、生漆0.5、水0.5)」のようにです。これは飽くまでおよその目安としてお考えください   



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