1 簡単な漆室ー紙筒の室
 
〜初めに〜


和竿に漆を塗りたいけれど、室がないために断念せざるを得ない人は結構いるとおもわれます。箱型の発砲七ロールを使う方法もありますが、長尺の竿を入れるには限界があります。石鯛竿のような長い物を入れたい。そういう方に紙筒を使った漆室を紹介したい。作る時間は2,3時間で、材料も安価で済みます。  
      
 
1紙筒を用意する(見本 長さー400mm、外径ー70mm、厚さ1mm)
 
          


@ 一本の線を引き、これからの作業の基準とする。

A 筒は大手文具店や包装専門店で扱っている。

B 長さ、太さ各種あり自由に選択できる。見本は70mmであるが、太ければ太いほど良い。


 2 内部に新聞紙を張る(湿度を上げる為の用意)

 

         



@印を付けた線に切り込みをする。

A新聞紙を5,6枚、内部の面積に合わせてカットする。

B新聞紙同士を互いに糊付けして、一枚の厚紙にする。それを筒内部に貼り付ける

C接着剤は木工ボンドのように水に溶けないものを使用する。

D同時に切り込みを閉じるのに使う画鋲を刺しておく(木ネジで可)。筒が長尺の場合、止める個所を複数増やす。

 
3 付属品を用意する
(左から @閉じ蓋一枚、A筒台座一対、B竿置き台座一対)
 
            


@透明な板をくり抜き閉じ蓋を一枚作る。蓋を固定する面を備えておく。なぜ一枚で良いのかは後述する。
 
A 筒台座を一対作る。

B 竿置き台座を一対容易し、新聞紙両端に固定する。 


4 竿を置いてみる 

        



  
@竿置き台座に触れる部分はもちろん漆塗り除外域である。

A竿を一旦取り出して、噴霧器で新聞紙に水分を含ませる。

B竿を元に戻して筒を閉じて、画鋲(木ネジで可)に輪ゴムをかけて止める。


 
完成 

         


@蓋は筒の片面だけにして、他方は開く。両面閉じた場合、夏期などで温度35度以上、湿度90%以上になると「漆焼け」を起こす。漆焼けとは、黒漆を塗っても、乾いた時茶色に変色する現象をいう。(もし漆焼けの実情を知りたければ、塗ったばかりの竿を浴槽に入れと置けばよい。もちろん湯は落とさず、
扉は閉じておく)

Aまたこれとは別に、中の湿度が高い場合「縮み」という現象が起きる。漆の大きな収縮率によって漆が小山のようにせり上がってしまうことを言う。漆を厚塗りした時に多く起きる。これを防ぐために、開いている口手を入れて一日数回竿を回転させると良い。

B逆になかなか乾かないようであれば、切り口を開けて竿を取り出し水気を与える。この際、竿には水が掛からないように気を付ける。水滴がある部分は、乾いた時斑点として出てくる。 
終わりに


できるだけ筒内の漆の乾き具合の記録を取っておくと便利です。春夏秋冬、漆の乾き具合と筒内の温度、湿度の数値を照らし合わせることにより、無駄のない効率的な作業ができます。

*私自身の漆室は、[小わざ・小道具T]にて紹介しています。  


番外
漆かぶれについて
 

漆を扱っていると言うと、必ず聞かれることは「かぶれないのですか」の質問です。かぶれませんと言うと不機嫌になり、かぶれますというと会得顔になります。

私は幸せなことに大きなかぶれに見舞われたことはありません。医者に言わせると、どこかの時期にかぶれが発生したが、本人は気付かなかっただけだという。また医者の弁では、何十年と漆を扱っている職人でも体調が悪い時は発生すると言います。

かぶれが起きると仕事にならないので、本を読んで随分勉強しました。それによると、漆の成分が毛穴から入り皮膚にアレルギーを起こす結果だという。口の中と手の平には毛穴がないのでアレルギーは起きない。風呂上りやお酒を飲んだあとは、毛穴が開くので要注意とのことです。風呂上りに漆を塗ることが多いので,一寸した対策をしている。要するに毛穴を塞げばいいのであるから、手にハンドクリームを塗ることにしています。ハンドクリームの油分が毛穴を覆い、漆成分の入り込む余地を作らないようにしています。しかしこれは両刃の剣なのです。もし手についている油分が漆に付けば、一か月、二か月経っても漆は乾かない。大変な気遣いが必要なことが欠点です。でも有効であることは変わりない。

外科用(または介護用)薄手のゴム手袋を使う手もあるがあまりお勧めできません。これを手にかぶせるとたっぷり汗をかき、毛穴が開き漆成分が入りやすくなってしまう。

皮膚についた漆を拭き取るには、油(植物油)が良いと一部の解説書にあります。私の経験では油で拭き取ると、漆が拡散して面積が広がってしまいます。溶剤(片脳油)を布に浸してさっと拭くのがいいように思われます。現実にかぶれが起きたらどうするか。絶対早期に医者に行くのが一番です。サワガニの汁、海水、塩水等昔ながらの民間療法がありますが効き目は人によって違いがあろう。医学的な治療が無難です。

最後に羨(うらや)ましい話をする。医学的に正しいか分からない。漆を扱う家に生まれた子は一生かぶれから逃れられるという。世に出てきて泣き声一つから、漆の成分が体内に入り免疫が出来てしまうという。確かに塗師(ぬし)の家系のわが師匠はかぶれから縁遠い。




                        




小 わ ざ ・ 小 道 具 3
      江戸東京たてもの園

     (市川 英之氏による)
  
 


 





  2 糸きめの工夫


〜初めに〜

絹糸を竹に巻き、糸に漆(新漆)を塗ってかじりつきを良くすることを糸きめと呼んでいます。難しい作業ではありませんが、失敗も多く見られます。失敗の多くは塗った漆液が竹の地肌に届いていない、   

また地肌の漆が乾いていないのに次の工程に入ってからそれに気づくなどがあげられます。ここではこれらを踏まえて、糸きめの工夫について述べたいと思います。

 
 @ 糸きめをする                        A 汚れを取る

      

 
@ 
写真は仮糸を巻いてある所に糸きめをしている所。見本の為、半分程度に漆を塗っての糸きめですが、本番ではすべての糸に漆を塗った後に行います。

釣り道具屋で糸きめ専用竹ばさみが市販されていますが、これを使わなくても作業は可能です。私が使っている道具は市販品のヒノキヘラを小刀で削り、さらに小さいヘラにしたものです。これを糸巻きの上に乗せ、力を入れて糸をしごいていきます。こうすることによって糸表面の漆が糸内部、そして下の竹肌へと漆が浸透していきます。2,3回繰り返せば完璧です。                           

その後、余分な漆が必ず表面に浮き上がってきますので、これを布で丁寧にふき取ります。ふき取らずにそのまま放置しても構わないのですが、漆が乾くのに倍の時間が掛かります。


 A 余分な漆を拭き取ると所々に漆液がはみ出すことがあります。この時は、綿棒に溶剤を付けてこするときれいに漆が取れます。

[乾燥]〜この段階で漆液は、糸表面、糸内部、竹肌についています。これを室に入れて乾かすのには最低3日は掛かります。安全の為に4〜5日経ってから次の工程に入った方が無難でしょう。


 〜終わりに〜

糸きめが終わり、乾燥も済んだ段階では糸が漆の強い収縮性によって竹を360度全体で締め付けています。強度が高まった所で印籠継ぎや並み継ぎの工程に入っても、、簡単には竹はひび割れしません。 

 


3 竿の継ぎ順番
 ★初めに

二本継のカワハギ竿を作る工程です。

この段階では、切り組みはすでに終わり、印籠芯のはめ込み、また仮糸巻きも終わっています。


【1】


    

グラス穂先は購入したままの長さになっています。穂持ち、穂持ち下、握りの各部分の継ぎが終わった最後に穂先を取り付けます。

 
【2】


   

穂持ち下を握りに取り付けます。


 【3】


   

@−カワハギ竿用のグラス穂先を最初は適当な長さと思われる所にテープで固定します。

A−その後全部の竹を接合して25号の重りを下げて、竹全体にかかる負荷を調べます。この位置が適当と考えられた所でグラス穂先を裁断します。

 
【4】


   

グラス穂先を接合した後、仮巻してあった穂持ち、握り部の糸を外します。


【5】


   

糸巻きをします。穂持ちには絹糸50番手、握りには30番手が適当と思われます。


【6】


   

糸には生漆を塗り、ヒノキヘラで糸巻き円周を力強くしごき、糸内部そして糸の下まで漆が届くようにします。ここで余分に浮いてきた漆は紙でふき取ります。

漆室で4日間ほど乾かしたら繋ぎは終了です。以後は繋いで一本にして中矯めを行います。

 


4 節の多少による曲がり

★同じ長さの竹ならば「節の多い竹」と「節の少ない竹」が目の前にあれば、一般的には前者を選ぶのが普通です。私も多くの場合そうします。けれども節が多いことが和竿として作るための唯一の選び方かとなると必ずしもそう言い切れません。


 【条件】

@〜同じ長さの布袋竹の延べ竿
A〜同じく30号の重りを下げる




     

 【@節が少ない竹】

(1)節の少ない竹はテーパー(勾配)が緩やかなのが普通です。つまり元径と先径の差に大きな違いは生じません。そのために重りを下げるときれいな楕円形のしなりとなります。七三調子または胴調子のしなりになります。

(2)しかし節間が長いため、節間にかかる負荷は大きくなり、特にその中央は最大に達します。これ以上大きいオモリを下げると、節のしなりを支えている上下二点の節のどちらかが破損します。節間の長さはしなることから負荷を逃していきますが、節そのものは”しなり”とはならないので負荷が重点的に重点的に集まって折れるという構図です。

{長所}〜軽い事。緩やかなしなりで釣りを楽しむことができる事。延べ竿の状態で釣りをするならばキス      釣りが向いていると思います。  

{短所}〜重りに限度がある事。破損し易い事。

 
【A節の多い竹】


(1)一般的にはf節間の詰まっている竹はゆっくり成長するために肉厚で、しかもテーパー(勾配)が急角度になっています。つまり元径と先径の差は大きくなっています。重りを下げると胴の部分はわずかに曲がるのみで、曲りが大きいのは穂先です。八二調子または先調子と呼ばれています。

(2)穂先にかかる負荷は各節間で均等に受けるために、重いオモリを下げても折れることはあまりありません。延べ竿のまま使うとしたら、カワハギ釣りに向いていると思います。

{長所}〜大きいオモリ負荷に耐えられる事。予想外に大きな魚が掛かっても各節間で負荷を均等に分      散できるため良い釣り竿となる。

{短所}〜肉厚で重量が感じられる事。丈夫であるが”竹のしなり”に欠ける事。

 
   

 
 

5 グラス穂先の長短 (用途の違い)

「和竿つくりは、穂先から始まり、穂先で終わる」と私は思っています。穂先には各種ありますが、選定と繋ぎにおいて意外と慎重に扱わなければならないのがグラス穂先です。
”竿全体が先調子ならば穂先も先調子、竿が胴調子ならば穂先も胴調子”〜例外もありますが、これが一般的な選定の基準と言えましょう。

紙面の関係で竿全体を図に表すことができないので、説明は穂先と穂持ちに限らせていただきます。
(改めて言う事でもないのですが、いずれの穂先も穂持ちと接合する時は、穂持ちの長さを越えることはありません)
      

 
(1)〜例外はありますが、短めのグラス穂先は先調子にできています。またこれは先が細く、元へいく     に従って太くなる、いわゆるテーパー(勾配)のきつい形状が普通です。  

これに見合う穂持ちはグラス穂先の元の太さと強靭さに負けない竹が必要となります。また、グラス穂先をつなぐ時は一節目のぎりぎりの所に持ってくるようにします。グラス穂先の元の強靭さを節の強靭さとが見合う形にするためです。

★竿の種類〜@タイ竿(ひとつテンヤ釣りを含む)。鯛の口は固いので、アタリがあったら竿を頭上まで          上げてかかりを良くします。その時グラス穂先の強靭さが助けとなります。
      
         A胴突竿。この竿には30〜50号のオモリを下げます。ここでも強靭な穂先と穂持ちが            必要です。
      
         Bカワハギ竿。穂先の5〜6cm先であたりを捉えないと釣果には結び付きません。その           ためには先調子の穂先が必要ですが、それほどの太いクラス穂はいりません。

 
(2)〜先端から元までの距離は緩やかなテーパーになっています。短めの穂先に比べると、魚一枚々    の引きを楽しんで釣る釣法に向いている穂先です。

穂先の元は細いので繋ぐ穂持ち竹も細めです。継ぎで大切なことは、竹の先端口から一節目までを長めにして置きます。穂先をつないだ後、一節目付近の竹をしなりをいかすような継ぎをすると長いグラス穂の特徴を生かせます(図ー茶色の斜線部)。

★竿の種類〜@ヒラメ竿がここでは代表的な竿と言えます。私が使っているヒラメ和竿の穂先は80cm          あまります。竿全体の長さが3m強あり、胴調子で魚とのやり取りを楽しんでいます。

         Aマゴチ竿。大きいマゴチとなると2s前後の重さとなるので、穂先と竹全体の選定には          慎重ならざるを得ません。

         Bメバル竿。一匹かけた後は、更に追い食いをさせてもう一匹となり、胴あたりに振動が          伝わってきて心地よいものです。長めの竿です。
         
         Cキス竿。メバル竿より更に細い穂先と穂持ちで作ります。

         Dヘチ竿。キス竿より更に細く仕上げます。1〜2kg級の黒鯛が来る時もあるので、竹素          材は厳選され、全体的に節間が詰まった細めの竹を使います。
         







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